
「資源小国・日本」とよく言われますが、実は日本は世界屈指の金属資源保有国でもあります。
その正体が、廃棄された家電やスマートフォンに眠る**都市鉱山(Urban Mine)**です。
2025年現在、脱炭素・EV化・半導体需要の拡大により、
レアメタル不足と資源価格高騰が世界的な課題となっています。
その中で、日本の都市鉱山は再び大きな注目を集めています。
都市鉱山とは?|廃棄家電が「資源」になる時代
都市鉱山とは、使用済みの家電製品や電子機器に含まれる
金・銀・銅・レアメタルなどの金属資源を指す概念です。
都市鉱山に含まれる主な機器
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スマートフォン・携帯電話
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パソコン・タブレット
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テレビ・液晶パネル
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家電製品(エアコン、冷蔵庫など)
これらの電子機器は、天然鉱石よりも高い金属含有率を持つことが多く、
「掘る鉱山」より「回収する鉱山」のほうが効率的な場合もあります。
スマートフォン1台はどれくらいの金を含む?
スマートフォン1台から回収できる金は、
約0.03グラム前後とされています。
一見すると少量に感じますが、
日本では年間数百万台規模の使用済み携帯電話が回収されています。
👉 合計すると、数百kg単位の金が都市に眠っている計算です。
さらに、スマートフォンには以下の金属も含まれます。
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金(Au)
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銀(Ag)
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銅(Cu)
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パラジウム(Pd)
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ニッケル(Ni)
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コバルト(Co)
まさに「持ち運べる鉱山」と言える存在です。
日本の都市鉱山は世界トップクラスの埋蔵量
金の埋蔵量は世界全体の1割以上
物質・材料研究機構(NIMS)などの推計によると、
日本の都市鉱山に蓄積されている金は約6,000〜7,000トン規模。
これは、**世界の天然金埋蔵量の約10〜15%**に相当するとされています。
インジウムは世界消費量の数年分
液晶パネルや半導体製造に不可欠なインジウムについても、
日本の都市鉱山には**世界埋蔵量の約15〜16%**が集中しています。
これは、世界の消費量換算で数年分を賄える量です。
レアメタル価格はなぜ高騰しているのか?
需要拡大の背景
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EV(電気自動車)の急速普及
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再生可能エネルギー設備の拡大
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半導体・AI・データセンター需要の増加
インジウム、ニッケル、コバルトなどのレアメタルは
埋蔵量が限られており、供給増加が追いついていません。
2050年に起こる資源危機
近年の研究では、
2050年までにレアメタルの累積需要量が地上の潜在埋蔵量を超える
可能性が高いと指摘されています。
つまり、
👉 「新しく掘る」だけでは間に合わない時代が来るのです。
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なぜ今「都市鉱山」が重要なのか【2025年視点】
2025年以降、都市鉱山が注目される理由は次の3点です。
① 資源安全保障の強化
海外資源への依存を減らし、
国内で資源を循環させることが国家戦略となっています。
② 脱炭素・環境負荷の低減
都市鉱山は、
天然鉱山よりCO₂排出量が少ない資源確保手段です。
③ 経済価値の創出
廃棄物だったものが、
**「再資源化ビジネス」**として新たな雇用と産業を生み出します。
海外も注目|ミャンマーで進むレアメタル回収ビジネス
スマートフォン普及が進むミャンマーでは、
すでに廃棄電子機器からレアメタルを回収するビジネスが動き始めています。
鉱物資源国であるミャンマーの人々が、
日本の都市鉱山に価値を見出しているのは象徴的です。
一方、日本国内では
回収ルートが確立していない機器が、
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金属を回収されないまま廃棄
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海外へ安価に流出
といったケースも少なくありません。
まとめ|廃棄家電は「未来資源」になる
日本の都市鉱山は、
すでに存在する巨大な資源ストックです。
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レアメタル不足
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資源価格の高騰
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環境負荷の低減
これらすべての課題に対する答えが、
私たちの身近な廃棄家電の中にあります。
資源は「掘る」時代から「回す」時代へ。
不要になった家電は、
未来を支える「資源の原石」なのです。

