もしゲームやアニメの中でしか見ないような、超高密度で入り組んだ立体迷宮の街が、現実に存在していたら…それが「九龍城砦(Kowloon Walled City)」です。
場所は香港。わずかサッカーグラウンド3〜4面分くらいの土地に、最大で3万人以上が暮らしていました。
1. 始まりは軍事拠点
19世紀の中国・清朝が、海賊や密輸を取り締まるために作った要塞がスタート。1847年に石造りの城壁が完成して、兵士や役人が駐屯していました。
2. 「誰のものでもない土地」に
香港はイギリスに割譲されましたが、九龍城砦は「中国の土地」という扱いが残りました。ところが中国もイギリスもあまり関与せず、**事実上“無法地帯”**に。ここから伝説が始まります。
3. 戦後、超過密都市に進化
戦後、中国本土から逃げてきた人々がどんどん流入。法律も建築基準もほぼ無視され、建物が勝手に上に横に増築されまくり。
高さ14階くらいのビルがギュウギュウに並び、日光がほとんど差し込まない通路もありました。
4. 街の中は“何でもアリ”
九龍城砦の中には、診療所、学校、食品工場、商店、寺院までそろっていて、外に出なくても暮らせました。
ただし、無許可の病院や工場、ギャンブル場、麻薬取引なども横行し、裏社会の拠点としても有名に。
5. 最後は公園に
1987年、香港政府と中国政府が撤去を決定。1993〜94年にかけて全て解体され、今は「九龍城公園」として生まれ変わりました。城壁や城門の一部は復元され、見学できます。
6. なぜ今も人気?
九龍城砦は、カオスなのに独特の秩序もある街として、写真集や映画、ゲーム、マンガの題材になっています。
リアルな「ブレードランナーの街」とも呼ばれ、若い世代のサブカルチャーにも影響を与え続けています。
💡 まとめ
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元は軍事要塞 → 無法地帯 → 超過密都市 → 公園
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混沌と人間のたくましさが同居する唯一無二の街
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今は跡地で当時の雰囲気を少しだけ味わえる