はじめに
古い住宅を買ってリノベーション(大規模改修)して過ごしたり、世代や職業の異なる人がシェアハウスで共同生活を送ったり。生活の多様化に伴い、住まいの方が多彩になっている。戦後75年の住宅の歩みを振り返り、現在の住まい方を見つめ直すことで、これからの住まい像を探った。
今までは新築住宅が主流
日本では長い間、新築住宅の供給が優先されてきた。戦争中に空襲などを受けて多くの住宅が焼失し、終戦直後に420万戸の住宅が不足したからだ。その解消が戦後復興の大きな目標となった。
1950年に住宅資金を貸し付ける住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)も発足し、集合住宅を大量に供給。ダイニングキッチンなどを備え、近代的な生活にあこがれる人からの応募が殺到し、1962年に入居の始まった赤羽台団地(東京)は、倍率が100倍を超える部屋もあった。
民間企業の参入
民間企業も住宅建設に参入。1960年前後には、工場生産した部材を現場で組み立てることで工期を短くする「プレハブ工法」の住宅も登場。それを手掛けた大和ハウス工業は、「注文が相次ぎ、施工を担当する人材確保のため、奔走した」と聞く。経済成長に沸く1970年代前後であった。
1968年には住宅数が世帯数を上回り、数字の上では住宅不足は解消された。しかし、国は経済を支える産業として育成を続けた。国土交通省によると、住宅流通に占める新築の割合は2008年で8割を超える。一方で空き家が近年増え、社会的な問題になっている。
新築から中古へ
景気停滞などの影響で、住み手の意識は必ずしも「新築優先」ではなくなりつつある。住宅のリノベーションを手掛ける設計事務所によると、新築に比べ割安な中古物件に注目する人が最近増え、年間約50件の改修依頼が寄せられる。
中古住宅を有効に活用することで、暮らしに合わせた家造りができ、立地や間取りなど、暮らしの選択肢が広がることに消費者が気付き始めた。
まとめ
国も中古住宅の流通を促すため、購入や改修のためのローンや建物検査の普及に取り組み始めた。最近は、自ら壁の色を塗り替えたり、家具を作り直したりする人が増え、住まいへの関心が高まっている。通称「DIY」。新型コロナウィルス感染症の影響もかなり大きい。
男性のみならず、DIY女子と言う言葉も生まれ、ホームセンターではだれでも気軽に作業できるよう「DIYコーナー」まで用意されていて、住まいへの関心が高まっている。人口減少が進む中、住宅の新築を抑制し、中古住宅を有効に活用していくことが欠かせない。