
「最近、データセンターが増えすぎてない?」
AIやブロックチェーンについて調べていると、そんな疑問を持つことがあります。
巨大な建物の中に大量のコンピューターが並び、24時間365日動き続ける。
そして、コンピューターを冷やすために電気を使い、もちろん動かすためにも電気を使う。
なんだかすごい時代になりました。
私たちは「デジタル社会」と呼んでいますが、実際にはデジタルサービスの裏側に、巨大な物理的インフラがあります。
スマホの中には何もないように見える。
でも、その写真も、SNSも、AIも、暗号資産も、どこかのサーバーで動いています。
今回はブロックチェーンを入り口に、
「人間はなぜ、こんなに大量のコンピューターを必要とするようになったのか?」
という少し変わったテーマを、文化人類学の視点から考えてみます。
そもそもデータセンターって何?
簡単に言えば、たくさんのコンピューターを集めた巨大な施設です。
私たちが普段使っている、
- Google検索
- SNS
- 動画配信
- オンラインゲーム
- クラウドサービス
- AI
- 暗号資産
- ブロックチェーン
などのデータや計算処理を支えています。
つまり、
「インターネットは空中に存在している」
ように感じますが、実際にはそうではありません。
山のようなサーバー。
大量の電力。
冷却設備。
通信回線。
そして、それらを支える人間。
かなり物理的です。
ブロックチェーンも「コンピューターの文明」
ブロックチェーンという言葉を聞くと、
「ビットコイン?」
と思う人が多いでしょう。
もちろん代表例はビットコインです。
ブロックチェーンでは、ネットワークを維持するために大量のコンピューターが働いています。
特にビットコインでは、マイニングと呼ばれる計算競争によって取引の承認やネットワークの維持が行われています。
つまり、
「中央の大きなコンピューター1台に全部任せる」のではなく、世界中のコンピューターでネットワークを維持する
という発想です。
これは従来の金融システムとはかなり違います。
ところが、データセンターの主役はブロックチェーンだけではない
ここは大切なポイントです。
「データセンターが増えている=暗号資産のせい」
というわけではありません。
現在の大きな増加要因の一つが、AIです。
IEAによると、世界のデータセンターの電力消費は2025年に約17%増加しました。さらに、AIに特化したデータセンターの電力消費は2025年に約50%増加したとされています。
IEAは、世界のデータセンターの電力消費が2025年の約485TWhから2030年には約950TWhへ、およそ倍増すると見込んでいます。
つまり今、
ブロックチェーンだけではなく、AI、クラウド、動画、オンラインサービスなど、デジタル文明そのものが大量の計算能力を求めている
わけです。
文化人類学的に見ると、これはかなり面白い
ここからが文化人類学の出番です。
文化人類学では、
「人間は環境や技術と、どのような関係を築いているのか?」
ということを考えます。
昔の人間は、
石を使いました。
火を使いました。
農具を作りました。
蒸気機関を作りました。
電気を使いました。
そして現在、
コンピューターを大量に並べています。
人間は便利な道具を発明すると、その道具をさらに大量に使うようになります。
火を手に入れたら料理をする。
車を作ったら道路を作る。
スマートフォンを作ったら通信網を作る。
AIを作ったら、
「もっと計算能力を!」
となる。
人類、なかなか欲張りです。
「もっと計算できるようにしよう!」という人類の習性
ここで会社員の日常に置き換えてみましょう。
あなたが仕事でExcelを使っているとします。
最初は、
「これ便利だな」
で終わります。
ところが慣れてくると、
「関数を使えばもっと効率化できる」
となります。
さらに、
「マクロを使えば自動化できる」
となる。
そして最終的には、
「そもそもこの仕事、AIで全部できない?」
となる。
技術は、
便利になる→もっと使う→もっと高性能なものが欲しくなる
という循環を生みます。
AIも同じです。
「ちょっと質問する」だけだったAIが、
文章を書く。
画像を作る。
動画を作る。
コードを書く。
複雑な推論をする。
そして次は、
「AIエージェントに仕事を任せよう」
となっていく。
当然、その裏側では計算量も増えていきます。
私たちは「情報を食べる生き物」になった?
文化人類学的に考えると、さらに面白くなります。
昔の人間は食料を求めていました。
狩猟。
採集。
農業。
漁業。
現代人も食料を必要とします。
しかし、それだけではありません。
私たちは一日中、
情報も食べています。
朝起きてニュースを見る。
SNSを見る。
メールを見る。
YouTubeを見る。
仕事のチャットを見る。
AIに質問する。
寝る前にもスマホを見る。
「今日のニュースは何かな?」
「株価はどうなった?」
「海外では何が起きている?」
「AIの新機能は?」
人間の胃袋は一つですが、
情報を受け取る入口は無限に増えました。
そして、その情報を処理しているのがデータセンターです。
会社員のストレスとデータセンターは、意外とつながっている
ここで少し自分の生活に戻してみましょう。
仕事で疲れていると、
「もうスマホなんて見たくない」
と思うことがあります。
ところが、
Slack。
メール。
LINE。
ニュース。
SNS。
通知。
また情報がやってきます。
そして私たちは、それを処理します。
返信する。
判断する。
比較する。
検索する。
保存する。
考える。
つまり、
人間自身も小さな情報処理装置のようになっています。
一方、世界のどこかでは巨大なデータセンターが、
人間が生み出した大量の情報を処理しています。
なんとも不思議な関係です。
「デジタルなのに、電気が必要」という当たり前
私たちは、
「データだから場所を取らない」
と思いがちです。
写真1枚。
メール1通。
AIへの質問。
暗号資産の取引。
画面上では小さなものです。
しかし、その背後にはコンピューターがあります。
そしてコンピューターには電力が必要です。
IEAによれば、2025年のデータセンターの電力消費は世界の電力需要増加の一部を押し上げる要因となっており、2030年に向けてもデータセンターの拡大が続くと予測されています。
つまり、
「デジタル化=物理的なものがなくなる」
ではありません。
むしろ、
「見えないところに巨大な設備が移動した」
と考えた方が近いのかもしれません。
データセンターが増えることは悪いことなのか?
ここは単純に、
「データセンター=悪」
とは言えません。
AIによって仕事が効率化される。
医療や科学研究に役立つ。
再生可能エネルギーの活用を最適化できる可能性もある。
企業の生産性が上がる。
新しいサービスも生まれる。
一方で、
電力需要。
送電網への負荷。
水や土地など地域資源への影響。
温室効果ガス排出。
地域社会との調整。
といった課題もあります。
IEAも、データセンターの電力消費は世界全体ではまだ比較的小さな割合である一方、施設が集中する地域では電力需要への影響が大きくなり得ると指摘しています。
だからこそ、
「便利だから増やせばいい」でも「環境に悪いから全部やめよう」でもなく、どう共存するか
が重要になります。
未来のデータセンターは「新しい工場」になる?
産業革命の時代には、
工場が街を変えました。
鉄道が街を変えました。
発電所が社会を変えました。
そして今、
データセンターが地域社会を変える時代
が始まっているのかもしれません。
データセンターができれば、
電力インフラが必要になります。
通信網も必要になります。
土地も必要になります。
働く人も必要になります。
場合によっては新しい産業も生まれます。
つまりデータセンターは、
単なる「コンピューターの倉庫」ではありません。
社会の構造そのものに関わるインフラになりつつあります。
「人間は何のために計算しているのか?」
ここまで来ると、少し哲学的になります。
AIで大量の計算をする。
ブロックチェーンで取引を記録する。
SNSで大量の情報を共有する。
動画を高画質で見る。
オンラインゲームをする。
クラウドに写真を保存する。
では、
私たちは最終的に何を求めているのでしょうか?
便利さでしょうか。
効率でしょうか。
娯楽でしょうか。
お金でしょうか。
安心でしょうか。
人とのつながりでしょうか。
文化人類学の面白さは、こうした「当たり前」を一度立ち止まって考えられるところです。
データセンター時代に、私たちが考えたいこと
これからAIやブロックチェーンがさらに普及すれば、データセンターの重要性はますます高まるでしょう。
だからこそ社会人として、
「AIは便利!」
だけではなく、
「その便利さは、何によって支えられているのか?」
まで考えてみると面白いと思います。
AIの向こう側にはデータセンターがある。
データセンターの向こう側には電力があります。
電力の向こう側には発電所があります。
そして、そのすべての上に私たちの社会があります。
スマホの画面だけを見ていると、このつながりはなかなか見えません。
おわりに
ブロックチェーンやAIの世界は、どうしても、
「価格」
「性能」
「最新技術」
「どの企業が勝つのか」
という話になりがちです。
でも、その裏側には、
電気を使い、土地を使い、人間が設備を作り、社会がそれを支えている
という現実があります。
文化人類学の視点から見ると、データセンターの増加も、人間が新しい技術を手に入れて、それに合わせて社会の仕組みを変えている一つの現象です。
石器からスマートフォンへ。
焚き火から発電所へ。
そして今、
「巨大なコンピューターの集合体」へ。
人類は本当に、いろいろなものを作ります。
そして、作ったものが増えすぎると、
「これ、電気足りるかな?」
と心配する。
……もしかすると、これも人類の伝統文化なのかもしれません。
仕事で疲れたときは、たまにはスマホを置いて考えてみましょう。
自分が一日に消費している情報はどれくらいなのか。
世界では、その情報を処理するためにどれだけのコンピューターが動いているのか。
そして、
「便利な未来とは、どんな未来なのか?」
ブロックチェーンやAIを考えることは、実は「人間はどんな社会を作りたいのか」を考えることでもあるのです。

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