はじめに
日本の交通インフラには「空白地域」が存在します。鉄道やバス路線が整備されていない地域、都市間アクセスが不便な地方都市では、移動が大きな制約となります。こうした交通課題を解決する鍵として、「航空機シェアリング」による新たな空の移動インフラが注目を集めています。
AIR SHARE(株式会社エアシェア)とは
今回紹介するベンチャーは、株式会社エアシェア。Fundinno で「あたらしい空の移動インフラ。航空機シェアリングで全国100以上の地域間をつなぐ J-Startup HOKKAIDO 選出ベンチャー」として資金調達を進めています。
創業は 2016 年、代表の進藤寛也氏は自ら操縦士資格を持ち、航空への思いを持って起業に至った背景があります。
サービス概要:航空機シェアリングの仕組み
AIR SHARE は、小型航空機のオーナー・有資格パイロット・利用者をマッチングするプラットフォームを構築。
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利用者は、行きたい地域間を予約・決済できる
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オーナーは遊休化している機体を貸し出して収益化
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パイロットは操縦機会を増やしてキャリア構築
この三者を結ぶスキームで、柔軟な空の移動インフラを目指しています。
AIR SHARE において、所管官庁との協議を重ね、特定事業スキームの適法性について確認を得た点が強みとされています。
強み・差別化要素
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法令適合性の追求:航空法規制が複雑な領域で、制度設計から協議を重ね、所管官庁の解釈回答を得ている点が参入障壁となります。
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特許・技術:マッチング・システムに関して特許を取得し、同様モデルの模倣を困難にする体制を整備。
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登録機体・パイロット基盤:現時点で 43 機の航空機、約 40 名のパイロットが登録。提携先も複数。
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地域網とアクセス:全国 100 か所以上の公共飛行場をカバー可能とし、従来アクセス困難な地域への対応力を持つ。
対応地域・カバー範囲
AIR SHARE は、全国 100 以上の公共飛行場をカバー対象とし、都市間移動から観光地域・交通難地域まで幅広くつなぐ構想を掲げています。
収益モデル・ビジネスモデル
基本的には、マッチングごとの契約に対して手数料を得る構造。
機体所有者には、遊休資産活用という価値を提供。
また、AIR SHARE のシステムを応用した陸上交通マッチング「DRIVA」構想もあり、将来的に空と陸の統合モビリティプラットフォーム展開を目指しています。
成長実績・現状の数字
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マッチング実績:今期で約 550 件(前期の約 250 件を大きく上回る)
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提携企業:航空関連事業者 3 社、販売代理店 7 社
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登録機体:43 機、登録パイロット:40 名
社会的意義と可能性
AIR SHARE のようなサービスには、さまざまな社会的意義があります:
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交通空白地域の解消:公共交通機関が整備されていない地域へのアクセスを可能に
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観光振興:従来アクセス困難な観光地を結ぶ空路ルートの創出
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緊急・医療搬送:リモート地域での医療搬送や災害支援にも応用可能性
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地域経済活性化:人・モノ・情報の流動性を高め、地域間の格差を軽減
リスクと課題
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運航実態と許可問題:参考情報にもある通り、「運航の実態」によっては航空運送事業の許可が必要になる可能性がある点に留意が必要。
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安全管理・メンテナンスコスト:航空機の維持・安全性確保には高いコストと専門性が伴う
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需要予測の不確実性:地方地域での定常的利用がどこまで確立できるか
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参入障壁:制度対応力や信頼性が必須となるため、後発参入は難しい
今後の展望/ロードマップ
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DRIVA(車両マッチングサービス)を秋頃に正式展開予定。北海道ニセコでの実証実験を実施済み。
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将来的には空飛ぶクルマ(eVTOL 等)との連携も視野に含め、空と陸をシームレスにつなぐサービス構築を目指す構想も掲げられています。
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上場(IPO)を視野に入れ、事業拡大と資金調達の拡大を目指す計画。
まとめ
エアシェア(AIR SHARE)は、既存の交通インフラの隙間を埋める「空のシェアリングモデル」という挑戦的なアプローチを通じて、日本の地方交通課題、観光、モビリティ格差の解消に寄与する可能性を秘めています。
ただし、制度・安全性・採算性といった壁は容易ではありません。本記事を起点として、読者がこの取り組みに関心を持ち、さらに深く見守る視点を提供できれば幸いです。
以下、参考資料
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