アメリカが肥満・糖尿病などでビザを拒否できる案を検討
2025年、アメリカ国務省が発出した新たなガイダンス案が注目されています。
それは、「肥満」「糖尿病」「心血管疾患」などの 慢性疾患を理由にビザを拒否できる という内容です。
これまでアメリカの入国審査では、主に結核など感染症がチェックの中心でした。しかし今回のガイダンスは、経済的負担につながる「長期的な健康リスク」にまで審査対象を広げています。
審査強化の背景:公的負担(Public Charge)ルールの拡大
今回の方針は、「将来的に公的扶助に頼る可能性がある申請者を避ける」という考え方に基づきます。
慢性疾患があると、医療費負担が増える可能性があり、長期滞在者の場合は特に公的負担につながりやすいと判断される場合があります。
このため、アメリカはビザ審査に健康状態を加味する方向へ動いています。
審査対象となる可能性がある健康状態
新ガイダンスには、以下のような慢性疾患が含まれるとされています。
■審査の対象例
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肥満(特に高度肥満)
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糖尿病
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心血管疾患
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呼吸器疾患(喘息など)
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がん
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神経疾患
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精神疾患
特に肥満については、睡眠時無呼吸症、心疾患、高血圧などの合併症リスクが強調されています。
健康状態の何が問題になるのか?
ポイントは「健康リスクそのもの」ではなく、
将来的に医療費を自力で負担できるかどうか です。
そのため、審査では以下の点がチェックされる可能性があります。
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民間医療保険に加入しているか
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長期滞在中の治療費を負担できる資金があるか
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既往歴や治療経過
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今後の治療方針
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扶養家族の健康状態(家族に重い疾病がある場合は不利になる可能性も)
特に永住ビザや家族ビザの申請者に影響が出るとみられています。
批判の声も
この方針には、国内外から批判が集まっています。
■主な指摘
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慢性疾患を理由とした差別につながる
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肥満や糖尿病を“社会的リスク”として扱うのは不公平
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ビザ担当官は医療の専門家ではなく、判断が恣意的になりやすい
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法制度としての透明性に欠ける
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健康状態の評価基準が曖昧
人権団体や移民支援団体も「医学的リスクを理由に排除する政策」として反対しています。
日本人への影響は?
日本は生活習慣病の患者が多い国でもあるため、影響が出る可能性は十分あります。
■影響が出る可能性が高い例
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長期滞在・駐在・永住ビザの申請者
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家族帯同ビザを取る人
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高額な医療費がかかると判断されるケース
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保険未加入の留学生
短期観光ビザ(ESTA)には影響しない見通しですが、長期滞在者は準備が必要です。
審査強化に備えてできる対策
健康状態に不安がある場合は、以下の対策をしておくと安心です。
■ビザ申請者がすべき準備
① 医療記録を整理する
診断書、治療の記録、投薬履歴などをまとめておく。
② 健康保険の加入証明を準備
アメリカ滞在中に十分な補償があることを示す。
③ 資産証明・銀行残高証明
長期的に医療費を自分で払える経済力の証明。
④ 医師のサマリー(英文)を取得
病状の安定性、今後の治療計画を簡潔にまとめた書類。
⑤ 専門の移民弁護士に相談
ケースごとに判断が分かれる可能性があるため、早めの相談がベスト。
今後の注目ポイント
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このガイダンスが正式な政策として確立するか
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審査の透明性や基準が公開されるか
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人権団体の反発や訴訟が起こるか
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学生ビザ(F-1)などへの影響範囲
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他国にも同様の審査基準が広がるか
まとめ
アメリカが検討している「肥満・糖尿病などでビザ拒否」の方針は、
健康状態をもとに将来の医療費リスクを判断するものです。
病気そのものではなく、
「医療費を自力で負担できるかどうか」
が審査ポイントになります。
今後も議論が続くと見られますが、長期滞在や永住を検討している人は、医療情報と経済証明をきちんと準備しておくことが大切です。



