近年、国内外の人気観光地では「人が来すぎることによる弊害=オーバーツーリズム」が深刻化しています。
マナー問題や景観破壊だけでなく、私たち防災の視点から見ると**「災害発生時に適切な避難誘導ができない」「地域インフラのキャパシティを超えている」**といった重大なリスクにも繋がります。
そこで今回は、災害対策コーディネーターの視点から考えるオーバーツーリズム対策をご紹介します。
①「受け入れ上限」を明確にする — 防災計画と連動させる
観光客数を単に「多い・少ない」で判断してはいけません。
“避難できる人数”で上限を設定することが重要です。
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避難所の収容人数
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一時避難スペースの確保状況
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緊急車両が通れる道路幅・渋滞リスク
これらを考慮し、**「平常時の賑わい」ではなく「非常時に守れる人数」でキャパを決める」**という発想が必要です。
② 分散観光 & 時間帯コントロール
一箇所に集中させず、周辺エリアやオフピーク(朝・夜・季節)に誘導する仕組みも有効。
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駐車場予約制・入山予約制
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「混雑状況の見える化」アプリ
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夜間ライトアップによるタイムシフト観光
これらは防災的にも“人の流れを可視化して管理する”という意味で極めて有効です。
③ 観光客にも「一時避難者」になってもらう仕組みづくり
急な地震・土砂災害・河川氾濫などが起きた際、観光客は一時的に**「地域住民と同じ避難対象」**になります。
だからこそ…
✅ 多言語のハザードマップの表示
✅ Wi-Fi接続時に自動で避難情報を表示
✅ 旅館・民泊で防災リーフレット配布
これはすぐにでも始められる対策です。
④ 「来てもらう」から「共に守る観光」へ
観光は地域の活力になります。しかし、無秩序に増えるだけではリスクになります。
私たち防災の立場から言えることはただ一つ。
“観光地を守れる防災力があって初めて、真の観光地と呼べる。”
オーバーツーリズム対策は「観光マナーの問題」ではなく、
**「地域の安全を守るためのリスクマネジメント」**として捉えるべきです。