さぁ、旅に出よう。
大学の頃から、
旅に出たい願望はあったが、
卒業したら普通に就職していた。
そして、会社というものに絡めとられていった。
「会社を辞める・・・・。」
社会人の誰もが一度は通るこの感情。
それは旅とは無縁の思いつきだったように思う。
辞表を出してから、上司の説得が続いた。
入社してから5年。
主任という肩書を手に入れ、
ようやく使い物になった頃の退社は、会社にとっても痛手だったのかもしれない。
「辞めてからどうするんだ?」
上司は、僕へ最後の質問をしてきた。
僕は笑顔で、
「外国へ行ってきます。セミリタイヤですよ。」
って返答した。
手応えのある人生への渇望・・・。
会社勤めを続けていると、
その言葉は青臭い若者の思い上がりに映ってくる。
周りにいるのは、給料を受け取り、
ボーナスの額に一喜一憂するサラリーマンだった。
そんな決まりきった人生に僕は憤りを感じていた。
その中で生き抜いていくことが、人生に思えてくる。
きっと人生の手応えはその中に潜んでいる。
それがまっとうな会社人間というものだと、
上司や同僚は無言で訴えていた。
きっと青臭い反発だったのだろう。
旅はそんな子どもじみた発想の先にあった。
そう、キッカケはなんだっていい。
旅に出て、人生を一度リセットしたくなった。
海外でテロに遭遇する危険もある。
二度と親の顔が見れなくなるかもしれない。
最低な親不孝だなぁと唇を噛みしめ、
僕は一歩踏み出す勇気を振り絞った。