世界を学ぶ旅

世界を知ると、人生はもっと豊かになる。

科学 脳科学

不安神経症のとき脳では何が起きている?|脳科学から考える「不安との付き合い方」

投稿日:

「何も起きていないのに、なぜか不安になる」

「体のことが気になって、頭から離れない」

「大丈夫だと思おうとしても、脳が勝手に最悪のことを考えてしまう」

不安神経症など、強い不安に悩んでいると、こんな感覚になることがあります。

そして、つらい状態が続くと、

「自分の考え方が弱いのでは?」

「どうして普通の人のように気にせず過ごせないんだろう?」

と、自分自身を責めてしまうこともあります。

でも、脳科学の視点から見ると、不安は単なる「気の持ちよう」ではありません。

不安には、危険を予測して自分を守ろうとする脳の仕組みが関係しています。

この記事では、不安と脳の関係をできるだけ難しい専門用語を使わずに解説しながら、

「不安をなくす」のではなく、「不安があっても生きられる脳の状態」をどう作っていくか

を考えてみます。

※この記事は脳科学・健康に関する一般的な情報を紹介するもので、診断や治療に代わるものではありません。症状が強い場合や生活に支障がある場合は、医療機関など専門家に相談してください。


不安は「あなたが弱いから」起こるわけではない

まず覚えておきたいのが、

不安そのものは悪者ではない

ということです。

人間にとって不安は、危険を予測するための重要な機能です。

たとえば、

「この道は暗いから気をつけよう」

「明日の仕事、大丈夫かな?」

「知らない場所だから少し注意しよう」

という感覚があるからこそ、私たちは危険を避けたり、準備したりできます。

アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)も、不安や心配そのものは人生の自然な一部だと説明しています。一方で、不安が過度になり、長く続いたり、日常生活に支障を与えたりする場合には不安障害として治療の対象になることがあります。

つまり、

不安=悪いもの

ではありません。

問題になるのは、警報が必要以上に鳴り続けてしまうことなのです。


不安になると脳では何が起こる?

不安を理解するうえでよく登場するのが、

扁桃体(へんとうたい)

です。

扁桃体は、脳の奥にある小さな領域で、危険や脅威に関係する情報処理に重要な役割を持っています。

たとえば突然、大きな音がしたとします。

「何だ!?」

と体が一瞬で反応しますよね。

心拍数が上がる。

体に力が入る。

周囲を確認する。

逃げる準備をする。

こうした素早い反応には、脅威を処理する脳のネットワークが関係しています。

ただし、ここで重要なのは、

扁桃体だけが「不安」を作っているわけではない

ということです。

不安や恐怖という体験には、前頭前野などの高次の脳領域や、記憶・注意など複数の仕組みが関係しています。

研究者の間でも、単純に「扁桃体=恐怖の場所」と考えるより、複数の脳回路が関係する複雑なシステムとして理解することが重視されています。


「体が不安」になることもある

不安が強いと、

「心配だからドキドキする」

と思いがちです。

ところが、実際には逆方向の影響もあります。

心拍が速くなる。

呼吸が浅くなる。

筋肉が緊張する。

胃がキュッとする。

汗をかく。

すると今度は、

「この動悸、大丈夫かな?」

「この感じは危険なのでは?」

と、身体感覚そのものを心配することがあります。

するとさらに緊張する。

そしてまた身体感覚が強くなる。

このように、

不安 → 身体反応 → 身体への注目 → さらに不安

という循環が生まれることがあります。

ここが、不安で苦しいときの大きなポイントです。

「考えすぎないようにしよう」と頭だけで頑張るよりも、

体の緊張を少し下げる

ことが助けになる場合があります。


不安なとき「最悪の未来」を考えてしまう理由

不安が強いと、

「もし○○だったら?」

という未来予測が止まらなくなることがあります。

「もし病気だったら?」

「もし何か起こったら?」

「もし失敗したら?」

「このまま一生治らなかったら?」

ここで脳がやっているのは、ある意味では「危険の予行演習」です。

不確実な未来に対して、可能性を探し続ける。

ところが、不安が高まっているときには、この予測が過剰になってしまうことがあります。

NIMHの研究でも、不安の強さと、脅威に関連する脳活動や、それを調整する領域の働きとの関連が研究されています。

だから、

「また最悪のことを考えてしまった……」

と自分を責める必要はありません。

脳が「安全を確認しよう」と頑張りすぎている、と考えることもできます。


では、不安をなくすにはどうすればいい?

ここで少し意外な話があります。

不安を完全になくそうとすると、かえって不安に意識が向いてしまうことがあります。

「不安になってはいけない」

「ドキドキしてはいけない」

「心配してはいけない」

と考えるほど、

「今、不安になっていないかな?」

と自分の状態を監視することになるからです。

そこで大切なのが、

「不安があっても大丈夫」

という経験を少しずつ増やすことです。

不安をゼロにすることを目標にするのではなく、

不安が10あったものを9にする。

あるいは、

不安があっても散歩できた。

不安があっても本を読めた。

不安があっても食事ができた。

そんな経験を積み重ねていきます。

 職場定着率91%!うつ症状専門の就労移行支援【atGPジョブトレ うつ症状コース】


脳を「安心モード」に戻す5つの習慣

① ゆっくり歩く

不安が強いときほど、頭の中だけで問題を解決しようとしがちです。

そんなときは、外に出てゆっくり歩いてみましょう。

運動は身体活動そのものとして健康に役立つだけでなく、気分や不安との関係についても研究されています。

「不安を消すために歩く」

ではなく、

「不安を抱えたまま少し歩く」

くらいで十分です。


② 呼吸をゆっくりする

不安が強いと、呼吸が浅く速くなることがあります。

そこで、

「大きく吸わなきゃ!」

と頑張る必要はありません。

むしろ、

ゆっくり吐く

ことを意識してみましょう。

たとえば、

4秒くらいで吸う
↓
6秒くらいかけて吐く

というように、無理のない範囲でゆっくり呼吸します。

苦しくなる場合は中止してください。


③ 「今ここ」に意識を戻す

不安は未来へ意識が飛びやすい状態とも言えます。

「明日は大丈夫かな」

「この先どうなるんだろう」

と考え始めたら、

「今、自分は何をしている?」

と確認してみます。

コーヒーを飲んでいるなら、

「温かいな」

本を読んでいるなら、

「この文章面白いな」

散歩しているなら、

「風が気持ちいいな」

でいいのです。

壮大なマインドフルネスをする必要はありません。

目の前の小さな現実に戻ってくる。

それだけでも構いません。


④ 「不安=危険」と決めつけない

ここはかなり重要です。

ドキドキした。

↓

「危険だ!」

ではなく、

「今、体が緊張しているんだな」

と一歩引いて眺めます。

不安による身体感覚は本当にリアルです。

だから「気のせい」と否定する必要もありません。

ただし、

身体感覚があることと、重大な危険が起きていることは同じではありません。

この区別を少しずつ覚えていくことが大切です。

なお、胸痛、強い息苦しさ、失神など、緊急性が疑われる症状がある場合は「不安だから」と決めつけず、医療機関に相談してください。

 


⑤ 「安心できた瞬間」を記憶する

不安な人ほど、

「今日も不安だった」

という記憶は残りやすいものです。

だからこそ、

「今日、少し安心できた瞬間」

を見つけてみましょう。

・朝の光が気持ちよかった

・散歩している間は少し楽だった

・本を読んでいるときは忘れていた

・家族と話しているときは安心した

・食事がおいしかった

・何かに集中できた

これらは小さな出来事に見えます。

でも、

「不安だけが自分の世界ではない」

と脳に思い出させる大切な材料になります。


「不安がある自分」を嫌いにならなくていい

不安神経症などで苦しんでいると、

「こんなことで不安になる自分はダメだ」

と思ってしまうことがあります。

でも、不安は人間の脳に備わった防御システムでもあります。

むしろ、

危険を察知しようとする能力が強く働いている

と考えることもできます。

もちろん、苦しさが強い場合は「個性だから我慢しよう」という話ではありません。

不安障害は治療できる病気であり、認知行動療法などの心理療法も治療選択肢の一つです。厚生労働省も不安障害に対する認知療法・認知行動療法のマニュアルを公開しています。

また、NIMHが紹介した研究では、認知行動療法後に不安症状が改善するとともに、複数の脳領域の活動にも変化が見られています。これは「脳は固定されたものではない」という可能性を考えるうえでも興味深い研究です。

 ブログランキング・にほんブログ村へ


まとめ|不安を「敵」にしない脳科学

不安が強いと、

「この不安を早く消さなければ」

と思ってしまいます。

でも、今日から少しだけ考え方を変えてみてもいいかもしれません。

「私の脳は、私を守ろうとして警報を鳴らしているんだ」

と。

警報が鳴ったからといって、必ずしも火事とは限りません。

そして、警報を止めるために無理やり戦う必要もありません。

「はいはい、今ちょっと警戒しているんだね」

くらいの距離感で眺める。

散歩する。

本を読む。

音楽を聴く。

温かいものを飲む。

誰かと話す。

そして、目の前の生活に少しずつ戻っていく。

そんな小さな経験の積み重ねが、不安との付き合い方を変えていくことがあります。

不安がなくなってから人生を始めるのではなく、不安があっても小さな日常を続けていく。

脳科学を学んでいくと、そんな生き方も少しだけ肯定できるようになります。

もし今日、不安で苦しいなら、

「どうしてこんなに不安なんだ」

と自分を責める代わりに、

「今日も脳が一生懸命、私を守ろうとしているんだな」

と声をかけてあげてください。

そして、できることを一つだけ。

窓を開ける。

外を少し歩く。

温かい飲み物を飲む。

好きな本を1ページ読む。

それで十分です。
学問・科学(全般)ランキング
学問・科学(全般)ランキング

スポンサーリンク

スポンサーリンク

-科学, 脳科学
-, , , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。

関連記事

AIやスマホなどのテクノロジーと不安の関係を表したイラスト

テクノロジーは不安を減らす?便利な時代なのに心配が増える理由

スマホがあります。 地図があります。 翻訳アプリがあります。 AIもあります。 分からないことがあれば、検索すれば数秒で答えが出てきます。 昔の人から見たら、かなりの魔法です。 ところが、現代人の私た …

宇宙から見れば、僕の不安なんてちっぽけだ|それでも今日を大切に生きる理由

「明日のことを考えると、なんだか不安になる」 「お金は大丈夫だろうか」 「この選択でよかったのだろうか」 「これから人生はどうなるんだろう」 人間をやっていると、まあ、いろいろあります。 僕自身も、些 …

石器時代からAIまでの人類の進化を文化人類学の視点で表現したイメージ

AIは人類最大の発明?文化人類学で読み解く「人間がAIを作った理由」

「AIが仕事を奪う」と聞くたびに思うこと AIは突然現れた技術ではなく、人類が何万年も積み重ねてきた知恵の延長線上にある 最近、ニュースを見ていると、 「AIが人間の仕事を奪う」 「AI時代が到来」 …

環境を考えると、仕事のストレスが少し違って見えてくる|文化人類学から考える「人間と自然」の関係

朝からパソコンを開き、スマホを確認し、メールを返信する。 会社へ向かい、会議に参加し、またパソコンを見る。 昼休みもスマホ。 帰宅してからもスマホ。 気がつけば一日中、人工的な環境の中で暮らしています …

人間だけでなくネズミや鳥や魚などの動物にも恐怖や警戒反応があることを表現した科学イラスト

不安になる生物は人間だけ?|動物も心配するのか科学的に考えてみた

「明日の仕事、大丈夫かな……」 「将来のお金、大丈夫かな……」 「さっきのメール、変なこと書かなかったかな……」 人間は、とにかくよく心配します。 しかも、まだ起きていないことまで心配する。 冷静に考 …

アフィリエイト広告を利用しています

greenfamily0122のアバター