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なぜ人間の脳は「わかっているのにやめられない」のか? ――脳科学×文化人類学で見る、人類のちょっと変な習性

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脳科学と文化人類学から見る現代人とスマートフォン

「石器時代の脳」と「現代社会」の奇妙な組み合わせを、脳科学と文化人類学から考える。

「スマホを見すぎている」

そう思いながら、スマホを見る。

「今日は早く寝よう」

そう思いながら、動画を見る。

「甘いものは控えよう」

そう思いながら、コンビニでスイーツを買う。

……人間とは、なんとも不思議な生き物である。

しかも困ったことに、本人はその矛盾にちゃんと気づいている。

「いや、これは良くないんですよ」

と言いながら、片手にはスマートフォン。

もう片方の手にはポテトチップス。

人類、約20万年。

文明を築き、文字を発明し、月まで行った。

なのに、

「あと5分だけYouTube」

には勝てない。

なぜなのだろうか。

ここには、脳科学と文化人類学を組み合わせると、かなり面白い人間の姿が見えてくる。


1.脳は「現代社会」に最適化されていない

まず重要なのは、人間の脳がスマートフォンやSNS、コンビニ、動画配信サービスのために進化したわけではないということだ。

人類の長い歴史の大部分では、

  • 食べ物を探す
  • 危険を避ける
  • 仲間と協力する
  • 子どもを育てる
  • 集団の中で生きる
  • 環境の変化に対応する

ということが、生存にとって重要だった。

つまり脳は、

「TikTokを3時間見るための臓器」ではない。

当然である。

そんな未来を石器時代の人類が予想していたら、かなり先見の明がある。


2.「新しいもの」が気になるのは、人類の生存戦略だった

人間は新しいものが大好きだ。

知らない音がする。

「何だ?」

知らない場所がある。

「行ってみたい」

知らない食べ物がある。

「食べられるかな?」

この「気になる」という性質は、昔の人類にとって非常に重要だったと考えられる。

新しい環境には、

危険があるかもしれない。

しかし同時に、

食料や資源があるかもしれない。

だから、

「なんか気になる」

という感覚は、単なる好奇心ではない。

生存に役立つ行動を促す仕組みでもあった。

ところが現代になると、

「なんか気になる」

の対象が、

SNSの通知

になった。

人類:

「向こうから変な音がしたぞ!」

現代人:

「スマホがピコンって言ったぞ!」

脳:

「確認せよ!」

……脳からすると、数万年前とそれほど変わらないのかもしれない。


3.SNSは「現代の部族社会」なのか?

ここで文化人類学が登場する。

人間はもともと、集団で生活してきた。

仲間からどう思われているのか。

誰が味方なのか。

誰が重要人物なのか。

誰と仲良くすべきなのか。

誰が怒っているのか。

こうした情報は、昔の人類にとって非常に重要だった。

そして現代では、その一部がSNSに移動している。

「いいねがついた」

「返信が来た」

「フォローされた」

「誰かが自分の投稿を見た」

これらは単なる数字や通知に見える。

しかし文化人類学的に見ると、

「集団の中で自分がどう扱われているか」

を確認する行為とも考えられる。

つまり、

昔:

「村の人たちは自分をどう思っている?」

現在:

「フォロワーは自分をどう思っている?」

人類:

場所は変わった。悩みはあまり変わっていない。


4.なぜ「他人の生活」が気になるのか?

SNSを開くと、世界中の人の生活を見ることができる。

旅行している人。

美味しいものを食べている人。

仕事で成功している人。

結婚した人。

家を買った人。

筋トレしている人。

そして、なぜか朝5時に起きて英語を勉強している人。

こちらは午前11時。

布団の中。

「……すごいな」

となる。

しかし、人間が他人と自分を比較すること自体は、現代社会だけの問題ではない。

小さな集団の中で生活していた人類にとって、

「自分は集団の中でどの位置にいるのか」

を把握することは重要だった。

だから人間の脳は、他人を観察する。

比較する。

評価する。

そして、ときどき落ち込む。

文明:

「世界中の人間を比較できるようにしました!」

脳:

「そんなに大量の比較対象はいらないです。」

文明:

「でも便利ですよ!」

脳:

「いや、だから多すぎるって。」


5.「昔の脳」と「現代文化」のミスマッチ

ここで面白いのが、

脳の進化と文化の進化のスピードが違う

という問題である。

人間の文化は猛烈なスピードで変化する。

石器。

農業。

都市。

文字。

産業革命。

テレビ。

インターネット。

スマートフォン。

生成AI。

数千年、数百年、数十年という短い期間で、人間の生活環境は激変した。

しかし脳そのものが、その速度で別物になったわけではない。

だから現代人の頭の中には、

「狩猟採集時代から持ち越した脳」

「2026年の文明」

が同居している。

これが、なかなか大変なのである。


6.冷蔵庫があるのに「食べ物を確保したくなる」

現代人の家には冷蔵庫がある。

スーパーもある。

コンビニもある。

スマホで注文すれば、食べ物が家まで届く。

食料不足に備えて、毎日マンモスを追いかける必要はない。

それでも人間は、

「お菓子を買っておこう」

「念のためパンも買っておこう」

となる。

もちろん、これは単純に「昔の脳だから」と説明できる話ではない。

食欲にはさまざまな生理的・心理的・社会的要因が関係している。

ただ文化人類学的に見ると、

食べ物は単なる栄養ではない

という点が重要になる。

食事は、

  • 家族とのコミュニケーション
  • お祝い
  • 儀礼
  • 季節の行事
  • おもてなし
  • 地域文化
  • アイデンティティ

など、文化と深く結びついている。

つまり人間は、

「腹を満たすためだけに食べているわけではない」

のである。

ケーキを見ると、

脳:

「糖分!」

文化:

「誕生日!」

思い出:

「子どものころ食べたなあ……」

感情:

「なんか幸せ」

財布:

「……。」

人間とは複雑である。

 


7.「暇」が苦手なのも人類の特徴?

現代人は「暇になるとスマホを見る」。

電車。

待ち時間。

ベッド。

トイレ。

エレベーター。

病院の待合室。

どこでもスマホ。

「暇だな」

スマホ。

「ちょっと休憩しよう」

スマホ。

「今日はスマホを見ないぞ!」

スマホで「スマホを見ない方法」を検索。

もはや芸術である。

しかし、ここにも人間の脳と文化の関係が見えてくる。

人間は社会的な動物なので、完全に孤立している状態よりも、周囲の情報を受け取ることに慣れている。

音。

声。

表情。

会話。

視線。

周囲の出来事。

昔の人間にとって、環境を観察することには意味があった。

現代では、その「周囲」がスマートフォンの画面にまで拡張された。

つまり、

世界を見るための道具が、手のひらに入ってしまった。

便利すぎる。


8.では、人間はスマホに負けるしかないのか?

もちろん、そんなことはない。

脳は「昔のまま」というより、

環境に適応できる柔軟性を持っている

と考えたほうが面白い。

人間の脳には、経験や学習によって変化する性質がある。

だから重要なのは、

「スマホを完全にやめる」

という極端な発想だけではない。

むしろ、

自分の脳がどんな環境に反応するのかを知ること

が重要なのかもしれない。

通知を減らす。

スマホを別の部屋に置く。

散歩する。

本を読む。

人と話す。

何もしない時間を作る。

こうした小さな行動でも、日常の環境は変えられる。

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9.文化人類学がおもしろいのは「人間を笑える」から

脳科学は、

「なぜ人間はこういう反応をするのか」

を考える。

文化人類学は、

「なぜ人間は、こんな生活や習慣を作ったのか」

を考える。

この2つを組み合わせると、

「人間って、合理的なようで、ものすごく変な生き物だな」

ということが見えてくる。

私たちは、

スマートフォンを発明した。

人工知能を作った。

宇宙に探査機を送った。

しかしその一方で、

「通知が来ていないかな?」

と5分おきにスマホを確認する。

このギャップが面白い。

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まとめ:人間は「進化した」のではなく「環境を変えすぎた」のかもしれない

人類の歴史を振り返ると、

脳そのものよりも、

人間が作った文化と環境の変化のほうが猛烈だった

ことに気づく。

狩猟採集社会。

農耕社会。

都市社会。

産業社会。

情報社会。

そしてAI社会。

人間は環境を作り変え続けてきた。

ところが、その環境の中で使われている脳は、突然最新モデルになったわけではない。

だから現代人の中には、

「石器時代の脳 × 21世紀の文明」

という、なかなかクセの強い組み合わせが存在している。

そして今日も、

「ちょっとだけスマホを見る」

と言いながら、1時間が経過する。

もしそんな自分に気づいたら、

「自分は意志が弱い……」

と落ち込む前に、

こう考えてみてもいい。

「なるほど。人類、まだ進化の途中なんだな。」

そう思えば、少しだけ自分に優しくなれる。

そしてスマホを置いて、本を開く。

……3分後。

「ちょっとだけ通知を確認しよう。」

人類の戦いは、まだ続く。

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