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絵画は「世界の見方」を映す鏡だった!文化人類学から読み解く絵画の楽しみ方

投稿日:

 

美術館に行くと、たまに困ることがあります。

目の前には、ものすごく立派な絵。

周りの人たちは、

「この作品には深い精神性が……」

「光と影のコントラストが……」

なんて真剣な顔で鑑賞しています。

一方、こちらは、

「……すごい絵だな」

で終了。

そして説明文を読む。

「なるほど……」

さらに読む。

「なるほど……」

全部読み終える。

「……つまり、何がすごいんだ?」

そんな経験はありませんか?

実は、絵画は「上手な絵を見るもの」だと思うと、少し難しく感じます。

でも文化人類学の視点から見ると、絵画はもっと面白くなります。

なぜなら絵画には、その時代の人々が何を信じ、何を恐れ、何を美しいと思っていたのかが詰まっているからです。

つまり絵画は、昔の人々が残した「文化のスクリーンショット」なのです。


人間はなぜ絵を描くのか?

そもそも、人間はいつから絵を描いているのでしょうか。

有名なのが洞窟壁画です。

フランスのラスコー洞窟などでは、古代の人々が動物などを描いています。

ここで素朴な疑問が出てきます。

「なぜ描いたの?」

現代なら、

「趣味です」

「Instagramに載せます」

「いいねが欲しいです」

で説明できます。

しかし当時はInstagramがありません。

当然、フォロワーもいません。

「このマンモスの絵、100いいね!」

なんてこともありません。

それでも人間は絵を描きました。

狩猟、宗教、儀礼、記憶、コミュニケーションなど、さまざまな目的があったと考えられています。

つまり人間はかなり昔から、

「目の前にないものを、何かにして残したい」

という欲求を持っていたのかもしれません。


絵画は「その社会の価値観」を教えてくれる

絵画を見るとき、つい、

「この絵は上手いか?」

と考えてしまいます。

でも文化人類学では、別の質問をしてみます。

「この社会では、何が重要だったのだろう?」

例えば王様の肖像画。

現代の感覚で見ると、

「ずいぶん偉そうに描かれているな」

と思うかもしれません。

しかし、それには理由があります。

大きく描かれる。

立派な服を着ている。

豪華な装飾品を身につけている。

周囲の人より目立っている。

これは単なる「盛りすぎ写真」ではありません。

権力や身分を視覚的に表現しているのです。

現代のSNSで言えば、

「高級車と一緒に撮影」

「高級ホテルのラウンジ」

「腕時計をさりげなく見せる」

みたいなものかもしれません。

時代は違っても、

「私はこんな人間です」

と視覚的に伝えたい気持ちは、案外変わっていないのです。


「美しい」の基準は世界共通ではない

ここも面白いところです。

私たちは、

「美しいものは美しい」

と思いがちです。

しかし、「美しい」と感じる基準は文化によって変わります。

顔の表現。

身体の描き方。

服装。

色。

装飾。

自然の描き方。

どれを美しいと感じるかは、社会や時代によって大きく異なります。

つまり、

美しさにも文化がある。

これは結構重要なポイントです。

例えば、現代日本では「若々しさ」が美しさとして評価される場面があります。

一方で、文化によっては年齢を重ねたことが知恵や尊敬の象徴になる場合もあります。

「美人」の基準すら、時代によって変わる。

そう考えると、芸術作品を見る目も変わってきます。


宗教と絵画は切っても切れない

昔の絵画を見ていると、宗教的なモチーフが大量に登場します。

天使。

神。

聖人。

仏。

菩薩。

地獄。

極楽。

なぜ昔の絵には宗教が多いのでしょうか。

理由の一つは、宗教が社会の中心にあったからです。

現在は、

「映画を観る」

「YouTubeを見る」

「SNSを見る」

「ゲームをする」

など、情報や物語に触れる方法がたくさんあります。

しかし、文字を読めない人が多かった時代には、絵画は重要な情報伝達手段でした。

つまり絵画は、

「見る宗教教育」

のような役割も果たしていたわけです。

現代人がスマホを見るように、昔の人は教会や寺院の壁画を見ていた。

そう考えると、ちょっと面白いですよね。


「風景画」にも社会が映っている

風景画を見ると、

「きれいな自然だな」

で終わりそうです。

しかし、ここでも一歩踏み込んでみましょう。

「なぜ、この風景を描いたのだろう?」

例えば都市が発展すると、街並みを描く絵画が増えていきます。

船が重要な社会では港が描かれる。

農業が重要な社会では農村が描かれる。

工業化が進めば工場や都市の風景が登場する。

つまり風景画にも、

「その社会が何を重要だと思っていたのか」

が表れます。

絵画は自然を描いているようで、実は人間社会も描いているのです。


ゴッホの絵を「上手い・下手」だけで終わらせない

例えばフィンセント・ファン・ゴッホの作品を見たとします。

「ひまわりだ!」

で終わってももちろんOKです。

芸術鑑賞に正解はありません。

でも、

「なぜ、この色なんだろう?」

「なぜ、こんな筆遣いなんだろう?」

「当時のヨーロッパでは、どんな社会だったんだろう?」

と考えてみると、作品が急に立体的になります。

芸術作品は、作者一人だけから生まれているわけではありません。

その人が生きた時代。

宗教。

経済。

政治。

家族。

都市。

他の芸術家との交流。

そうした社会の影響を受けながら生まれています。

だから絵画を見ることは、

一人の人間と、その人が生きた社会を同時に見ること

でもあります。


絵画は「人類のアルバム」なのかもしれない

ここまで考えると、絵画の見方が少し変わってきます。

絵画は単なる芸術作品ではありません。

そこには、

  • その時代の服装
  • 食べ物
  • 建物
  • 宗教
  • 家族
  • 身分制度
  • 戦争
  • 仕事
  • 美意識
  • 自然観

など、さまざまな情報が残されています。

つまり絵画は、人類が残した巨大なアルバムとも言えます。

しかも、写真が存在しなかった時代の人々の姿を見ることができる。

そう考えると、美術館はちょっとした「タイムマシン」です。

入場料を払って、数百年前の世界を覗きに行く。

なかなかお得な旅行です。

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絵画を見るときは「なぜ?」を3回繰り返してみる

美術初心者なら、難しい専門用語を覚える必要はありません。

まずは絵を見て、

「なぜ?」

と考えてみましょう。

例えば、

「なぜ、この人はこんな服を着ている?」

「なぜ、この時代にはこの服が重要だった?」

「なぜ、この社会では身分を服装で表現していた?」

ここまで来ると、もう立派な文化人類学です。

絵の技術を知らなくても大丈夫。

むしろ、

「この絵を描いた人は、どんな世界を生きていたんだろう?」

と想像するだけでも、作品との距離がぐっと近くなります。


まとめ|絵画を見ることは、人間を見ること

絵画は「上手な絵」を鑑賞するだけのものではありません。

その背景には、

「人間は何を大切にしていたのか?」

「何を恐れていたのか?」

「何を美しいと思っていたのか?」

「どんな社会で暮らしていたのか?」

という、人間そのものに関する物語があります。

だから美術館で絵を見て、

「なんかよく分からない……」

となっても大丈夫です。

むしろ、

「なんでこんな絵を描いたんだろう?」

と思った瞬間から、鑑賞が始まります。

絵画は、過去の人々から届いた一枚のメッセージ。

そのメッセージを文化人類学という眼鏡で覗いてみると、ただの「昔の絵」が、

「昔の人間が何を考えていたのかを教えてくれる資料」

に変わります。

次に美術館へ行ったときは、作品の前で少しだけ立ち止まってみてください。

「上手いな」で終わるのではなく、

「この人たちは、どんな世界を見ていたんだろう?」

と。

すると、美術館がちょっとだけ面白い場所になります。

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